欧米諸国で多い事実婚ですが、日本ではあまりなじみのない言葉です。
この事実婚を同棲と勘違いしている人もいるようですが、事実婚と同棲は全く違うものです。
今回は同棲と事実婚の違いや、事実婚を選ぶ女性の恋愛観、また法律上での事実婚の問題などについて解説していきます。
同棲とは違う『事実婚』
事実婚のお話をする前に、同棲と事実婚の違いについて説明します。
同棲とは「婚姻関係のない恋愛関係にある男女が一緒に暮らすこと」です。
事実婚とは2人で同居している状態で、本人たちが互いに夫婦だという認識を持ち、周囲からも夫婦という認識がもたれている関係をいいます。
籍を入れていない状態ですが、生計を同じくする、家事の分担や財産の共有といったことが含まれています。
そのため週末だけ、半同棲といった場合では事実婚と認められない場合が多いようです。
入籍すると互いの親や親せき関係との付き合い、周囲との付き合いも変わってきますが、事実婚の場合はそういった精神的負担が少ないので選ぶ人もいます。
また子どもがいないため、事実婚という形の結婚をしている人もいます。
日本では事実婚で生まれた子どもは約2%ほどですが、欧米のある国では半数もの子どもが事実婚で生まれています。
実際に同棲している人は多いのですが、子どもができたことをきっかけに社会保障などの問題を考え、法的にきちんとした結婚・入籍に踏み切る人が多いようです。
女性の働き方と恋愛観
事実婚の最大のメリットは「苗字が変わらない」ということ。
正式な結婚となると、婿養子でもない限り女性側が相手の苗字に変わりますが、最近ではこれを嫌がる女性が多くなっています。
事実婚を選ぶ女性で苗字を変えるのが嫌な人は、相手が嫌いというのではなく相手の苗字になることで自分の家から相手の家に取り込まれる、という考えを持っているようです。
ひと昔前なら女性はパートの人が多かったですが、今では派遣や正社員、契約社員といった働き方で働く女性が多く、バリバリのキャリアウーマンの場合、「結婚後も旧姓を使いたいのに使えない」といったことがあり、結婚して今までのキャリアを失いたくないという人が事実婚を選択することが多いようです。
いつまでも恋愛気分でいたいという女性の場合、事実婚を選ぶことで、夫や妻といった立場よりも気が軽くなります。
相手と対等な立場にいることで「〇〇家の嫁」といった縛りや、相手の両親や親せきとの付き合いも軽くて済むため、精神的な負担が減るといった考え方を持っている人もいます。
夫と妻というより、彼氏と彼女といったフランクな関係を望む人が増えているとも考えられます。
また、金銭的に苦しくて結婚式を挙げられない、といった状況で事実婚を選ぶケースも。
法律と周囲の問題
事実婚になる場合、法律的には戸籍が別々になります。
しかし、住民票には妻(未届または同居人)と記載できます。
本人同士はきちんとした夫婦の意識があり、家事などの分担や財産の共有などしっかりとしていても、籍を入れていない・式を挙げないということで周囲からは中途半端に感じられることが多く、身内からは反対される場合が多いです。
事実婚は法律上年金や社会保険に関しては婚姻しているときと同じ扱いを受けることができますが、住民税・所得税の配偶者控除を受けることができないというデメリットがあります。
また、パートナーの遺産相続権がないため、遺産・財産をきちんとしたい場合には遺言を作成しておく必要があり、相続しても相続税がかかってしまいます。
生命保険の受取も、事実婚では受け取ることができず、住宅ローンを共有名義にすることも難しい場合が多いです。
相手の浮気などが発覚したときや、やむを得ない理由で事実婚の関係を解消する場合には、婚姻と同じく財産分与や慰謝料の請求をすることができます。
一番のネック、子どもの問題
事実婚では夫婦別性になるため、子どもが生まれた場合、基本的に苗字は母親のものに、親権も母親に行きます。
父親は認知手続きが必要になり、事実婚の解消をする場合には親権を持つ側が養育費を請求することもできます。
夫が子どもを認知している場合のみ、子どもに遺産相相続権が発生します。
事実婚の場合、児童手当は収入の多いほうを基準にして支給対象になるかを算出され、一人親家庭とは認識されないため児童扶養手当の対象にされません。
子どもが生まれても事実婚を望む場合、成長して幼稚園や学校に通うようになると、周囲からどうして父親と名前が違うのかと聞かれるかもしれません。
最悪の場合、いじめの原因になってしまうこともあります。
また、心無い人からは隠し子や不倫してできた子というようなうわさを流されてしまうこともあります。
自分たちはきちんとしていても、周囲からは婚姻していないというだけで、子どもまでそういった目で見られてしまうことが多いのです。
事実婚カップルの多い欧米では法的対処もきちんとしているため、周囲からの理解もあり、事実婚で生まれた子どももきちんとした保証を受けることができますが、日本ではまだ法的な部分が整えられていないため、事実婚で生まれた子どもは苦労を強いられることになります。
今回は事実婚を選択する女性の恋愛観、法律的な問題などについて解説しました。
事実婚があまり知られていない現状では周囲の理解を得にくいため、不要な誤解を招いてしまうことがあります。
事実婚をする場合には先のことや法的な面もしっかりと考えて、現在の日本においては、子どもが生まれたタイミングで婚姻関係を結ぶといったことも考える必要があるでしょう。
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ECRII編集部 荻野
年齢非公表の男性編集者。かつては小説家志望で、恋愛小説をもって、とある文学賞へ応募した過去あり。エビデンスに基づいた恋愛心理の分析や統計的にみた恋愛パターンなど、形のない恋愛だからこそ、もっと科学的、学術的に恋愛を掘り下げてみたいと密かに思案中。その一方で、著名人の恋愛報道や不倫スキャンダルなど、刹那的な恋愛時事ニュースも大好物という一面も。