「結婚」は男性にとっても女性にとっても人生の一大事ですが、紙と法律に縛られる恋愛関係にはどうしても納得できないという人も多いはず。
そんな人には従来の「法律婚」ではなくて「事実婚」もひとつの選択肢です。
ここでは事実婚が具体的にどういうものなのかをご紹介します。
事実婚でも住民票には〈夫・妻〉と記載できる
結婚の形態には通常の手続きを経て結婚する「法律婚」の他に「事実婚」や「内縁関係」といったものがあります。
法律婚では婚姻届を提出すると同時に夫・妻双方の戸籍謄本を役所に提出し、これまでの戸籍から抜けて新しい戸籍を作ることになります。
一方、事実婚では現在の戸籍から抜ける必要はありませんし、婚姻届を出す必要もありません。
と言うと、ただ交際しているだけの状態とどこが違うのかと思う方もいるかもしれませんが、事実婚では二人一緒の住民票を作ることができるというメリットがあります。
住民票を作成する場合には続柄を「同居人」とすることもできますが、カップルのどちらかを「世帯主」として登録し、もう一方を「夫(未届)」あるいは「妻(未届)」と記載することが可能です。
日本では法律婚をすると夫か妻のどちらかが自分の姓を捨てなければなりませんが、事実婚にしておけば「夫婦別姓」、つまり自分の苗字を保持しながら夫婦関係を築いていくことができますので、仕事などの関係で苗字を変えたくない場合は事実婚を選択する人が増えてきています。
公正証書で証明!事実婚でもローンや保険がOK
カップルで住民票を作成する場合に、ただ単に「同居人」と記入すると事実婚のメリットを享受することができませんので注意が必要です。
たとえ婚姻届を出していなくても(未届)、続柄の部分に「夫」「妻」と明記しておけば、社会保険の点では法律婚をしている夫婦と同等のメリットを得ることができます。
例えば夫が会社勤めをしている、あるいは公務員の場合には妻(とその子ども)は夫が加入している厚生年金や健康保険の被扶養者となることができます。
保険料の追加負担なしで「健康保険被扶養者証」を発行してもらうことができますので、事実上夫婦として暮らしているのに健康保険を別々に払い込まなければならないといった理不尽なこともありません。
携帯電話料金の家族割引サービスも適用されますので、各キャリアに問い合わせてみるといいですね。
ただし、住宅ローンを組む際には戸籍上夫婦と証明されない限り、事実婚では二人でローンを組むことはできません。
ですから夫か妻のどちらかがローンでお金を借りることになります。
実は、年金や行政サービスもバッチリ!
事実婚をしていると健康保険ばかりではなく、国民年金に関しても恩恵を受けることができます。
例えば世帯主であるが夫あるいは妻が公務員か会社員の場合に、事実婚のパートナーの年収が130万円未満であれば「国民年金第3号被保険者」となることができます。
「第3号被保険者」とは「厚生年金、共済組合に加入している第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者」(※)のことですから、条件に該当していてしかもまだ手続きを済ませていないのであれば社会保険事務所に一度問い合わせてみるといいですね。
行政サービスに関してもさまざまな恩恵を受けることができますが、事実婚の事実を堅固にして権利をより確実にするためには「事実婚契約書」を作成しておくのがいちばんです。
事実婚契約書に「生活費の分担に関する取り決め」「子どもの養育」「事実婚解消の際の取り決め」などの条項を盛り込んで公正証書として残しておけば後々問題がありませんし、法的にもかなり有利になります。事実婚契約書の作成にかかる費用は5万円〜となっています。
税金や相続について、もっと詳しく知ろう
事実婚は税制面においては優遇措置がないというのが現状です。
法律婚をしているカップルであれば配偶者控除というものがありますので、配偶者控除の金額38万円に税率をかけた分だけ負担が軽くなります。
事実婚ではこの控除が適用されませんが、もともと配偶者控除の対象となるのは配偶者の収入が103万円以下などある一定の収入を超えない場合のみに適用されるものですから、夫も妻もバリバリ数百万円以上稼ぐ家庭では事実婚でも法律婚でもあまり関係はありません。
ただし相続に関しては事実婚だけだと何十年一緒に暮らしていても配偶者が亡くなった場合、残されたカップルは法定相続人とはみなされませんので注意が必要です。
万が一のトラブルを避けるためにも、正式に遺言書を作成しておくかあるいは「死因贈与契約」を交わしておくことをおすすめします。
お互いに60歳以上のカップルなど、ある程度の年配になってから結婚を考えているのであれば保障のより安定している法律婚の方が事実婚よりもおすすめです。
婚姻届は単なる紙切れと言ってしまうこともできますが、法的にそれなりの威力を発揮することも事実です。
相手が離婚の手続き中でまだ正式に結婚ができないというのであれば、とりあえず事実婚をしておくのも構わないかもしれませんが、一生続く夫婦関係を築くつもりであればゆくゆくはきちんと籍を入れた方が何かと安心です。
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ECRII編集部 荻野
年齢非公表の男性編集者。かつては小説家志望で、恋愛小説をもって、とある文学賞へ応募した過去あり。エビデンスに基づいた恋愛心理の分析や統計的にみた恋愛パターンなど、形のない恋愛だからこそ、もっと科学的、学術的に恋愛を掘り下げてみたいと密かに思案中。その一方で、著名人の恋愛報道や不倫スキャンダルなど、刹那的な恋愛時事ニュースも大好物という一面も。